上京に失敗した話
東京という街はつくづく怖い。
ミッションを持っていないと楽しめない街だ。
地方から上京してくる人は後を絶たないけど、呼ばれて東京に来るのが一番理想的だと思う。
呼ばれてくるということは与えられるミッションがある。
だから「帰る」「立ち去る」という選択肢が生まれる。
何かやりたいわけじゃないけど地方で社会人やって伸び悩んで、環境変えるために自分で東京へ出てくる人はだいたい潰れる。
潰れなくても、95%の人が東京じゃなくてもいいよね、それ?ってを事やってる。
ミッションを持っていないと楽しめない街に、ミッションを探しに来るのだから。
社会人になった後、他の街でミッションを見つけることができなかった人間が、東京でミッションを探すことができるほど親切にはできていないのが都会。
運良くミッションを見つけられたとしてもすぐ頭打ちになる。階層が分厚いから。
そして自分から退路を立っている分、頭打ちになっても退くに退けなくない。
こじらせると地方にいる人間に対して「東京で暮らしている自分はすごい」という百姓根性をむき出しにして空回りする残念な状態になる。
逃げ道を無くして挑むと決めた自分と、頭打ちになって伸びる見込みがなくなった自分とが喧嘩を始めるのだ。
自分とケンカしている奴が他人とケンカして勝てるわけがない。
これを和解させるのは骨が折れる。
かくいう私も今から5年前、環境を変えたくて上京しようとしたことがある。
結局その時上京には失敗した。働く先はあったが来ることができなかった。
あの時上京に賛成してくれた人とは今も友達だが、ほとんど話が噛み合わなくなってしまった。
あの頃上京に反対してくれた人は今も俺にとってのキーマンで居続けていくれている。
そして不思議なもので、もう東京になんて行く必要ないし、行きたくもない、と思ってから、東京に呼ばれる機会が増えた。
ミッションを果たしたら、私は福岡へ帰る。
あの時上京に失敗してよかったな、とつくづく思う。